ペース・レイヤリング戦略の概要は以下のリンクを参照
「アプリケーションのペース・レイヤリング戦略の採用によりイノベーションが促進される」
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20120222-01.html
ここからがEAサミットからの内容です
ITリーダーが抱えている問題は以下の3点
1. ビジネス戦略との乖離をいかになくしていくのか
ガートナーの調査結果から、IT部門において、自らのIT戦略が経営戦略と同期していないと考えている企業の割合がほぼ3分の2
2. ビジネス環境の変化に、情報システムはいかに俊敏に対応するのか
現在のビジネス環境は様々な要因で変化すること、それに企業が対応する際に情報システムが俊敏に対応できる状況にあるのか
3. 変化に対応すべき領域をいかに見極めるのか
情報システム(アプリケーション)がビジネス環境の変化に俊敏に対応するためには、変化に対応すべき領域をビジネス側の観点で見極めることが重要である。また、変更が本当に必要なのかを検討することも重要である
以上の課題を解決するためのアプローチがペースレイヤリングである。
ペースレイヤリングではアプリケーションを変更のペース(改修の頻度)に応じて三層に分けている。
1 記録システム
最も改修の頻度が少ないもの
会計などのように、日々のトランザクションを記録するようなシステム
2 差別化システム
次に頻度が高いもの
企業、あるいはその業界で独自のシステムであり、他社との差別化が図れるシステム
3 革新システム
最も改修の頻度が高いもの
ビジネスプロセスの大きな変革や新しいビジネスモデルをもたらすシステム
それぞれの層のシステムに求められる発想
「記録システム」には常識的な「普通のアイデア」、「差別化システム」には他社との違いを考える「異なるアイデア」、「革新システム」にはこれまでになり「新しいアイデア」が必要である
以下はそれぞれの層におけるガバナンスの例である。
記録システム | 差別化システム | 革新システム | |
APM | コスト、リスク、ビジネス適合性を評価 | 差異が維持されているかどうか評価 | 本稼動の準備ができているかどうか評価 |
PPM | ビジネスニーズと投資収益率(ROI)に基づいて優先度を評価 | ビジネス上の戦略的ニーズに基づいて優先度を決定 | ビジネスチャンスに基づいて優先度を決定 |
人材配置、スキル、ソーシング | 信頼性とコスト効率に優れた提供を重視 | 業務知識とスピードを重視 | 試験的な取り組みの設計を重視 |
財務分析と予算 | 信頼性とコスト効率に優れた提供を重視 | プロジェクトの進展に合わせて予算を繰り返し適用 | ベンチャー・キャピタル式の段階的な出資 |
アーキテクチャ管理 | データとプロセスの整合性を保証 | 記録システムと新規プロセスを活用 | 新しい技術と構造で試験 |
ソフトウェア・プロセス | 概してウォーターフォール型 | 概して漸増的及び反復型 | 概してアジャイル型 |
オペレーション/サポート・コラボレーション | 厳格に統制された変更管理 | 合理化されたシステム単位のプロセス | 中止権限を持つチームの管理 |
ベンダー管理 | 大規模、安定した大手ベンダー | ベストオブブリード、ビジネスプロセス管理スイート(BPMS)、コンポジットアプリケーション | 機能すれば何でも |
ガートナーからの提言としては
1. ビジネス戦略を意識したアプリケーション分類に着手する、アプリケーションの分類に変更の多寡の軸を加えてみる
既に分類がされている場合でも改めてビジネス戦略の観点で、分類を見直すことを提言する。そのことでビジネス戦略と乖離しないアプリケーションの対応方針が可能になる。そして、分類する際に、分類の軸に変更の多い・少ない、の評価軸を加えてみることで、新しい対応方法、方針が見えてくる可能性がある。
2. アプリケーションのガバナンス方針にペースレイヤの考えを取り入れる
ガートナーが提唱するガバナンスの八つの規律分野とペース・レイヤリングの各層ごとのガバナンスプロセスを参考に、各企業で「記録システム」「差別化システム」「革新システム」ごとのガバナンス・プロセスを設定する。
3. 記録システムの層は堅牢性を重視し、敢えて変更を加えない仕組み(標準プロセス)にする。そのことによって、変更の多い差別化・革新システムの層における、変化への俊敏な対応(デリバリー)が可能になり、ビジネスの差別化・確信が加速されることになる。
差別化・革新システムにより注力することが求められるが、差別化・革新システムを有効にするためには、堅牢で変更の頻度の少ない記録システムの構築が重要となる。
<感想>
ITは効率化、合理化のためのツールで、そもそも競争優位獲得のためのツールだという認識がIT部門側にない。この辺りの認識を変えるのが最初の出発点かと思われる。
記録システム、差別化システム、革新システムの分類は容易かと思われるが、それに基づくガバナンスの構築や新しい分類におけるリソース(ヒト、モノ、カネ)のアロケーションがなかなか難しいと感じる。クラウドを取り入れ、ローンチまでの時間を短縮し、投資効果をすばやく得ることで実現可能だろうか。
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